【探究を考える】「結果」でなく「過程」を重視することで、子どもが得られる大切な学びとは?
大人の「質問力」と「コメント力」が、探究活動の可能性を広げる
探究過程で多くの人と交流・対話をすることは、先生にとってもメリットがあると西村氏は話す。
「生徒を介して新しい視点を得られるという側面もあると考えています。探究指導というと、どうしても自分の教科に近いものだけを指導する先生もいるかと思います。でも、違う分野、例えば理科の先生が社会科学的なテーマの探究活動について知ることで新たな学びを得たり、自分の教科との関連性を見いだすなんてことも起こり得ます。そうなれば、それぞれの教科で実践する学びの質のさらなる向上にもつながっていくでしょう」(西村氏)
筆者が本イベントに参加して特に感じたのは、発表を聞いた参加者の質問力・コメント力が非常に重要になるということだ。本イベントの目的は、探究過程での対話を通じて、自分とは違う価値観、自分とは違う立場の見方・考え方を知り、気付きを得て、発想を膨らませ、その後の探究活動に生かすことだ。参加者はそこを念頭に置いて発表者と交流・対話することが求められる。
言葉で言うのは簡単だが、やってみると意外に難しい。実際、参加した先生たちもその難しさを感じたようで、「ついアドバイスをしてしまう」といった声もあったようだ。確かに大人は子どものためを思ってつい“答え”を与えがちだ。だがそれは、ゴールまでの道筋を示すのと同義でもある。“結果”を出させることが目的であればそれでもいいが、自分たちで試行錯誤しながら自分たちなりの“答え”を見つけるという“過程”は失われてしまう。さらにいえば、アドバイスした大人の想定を超えることもなくなってしまうだろう。子どもたちの可能性を引き出したいのであれば、直接的なアドバイスをするのは良策とはいえないと思われる。
「質問力・コメント力の質をどう担保していくかは今後の課題」と藤村氏が言うように、ここが一番の肝といっていいだろう。質問力・コメント力を身に付けることは、先生にとっては生徒たちの探究の質を高めていく上で必須の能力だと感じる。探究過程における交流・対話に積極的に参加することは、新たな視点を得ながら自分を成長させることにつながり、それが結果として生徒の成長を促すことになる。
さらにいえば、これは先生に限った話ではない。ビジネスにおける人材育成の場面でも、親が子どもと接するあらゆる場面でも根本は同じだ。質問力・コメント力を鍛えることは、ビジネスパーソンとしても親としても自分を成長させることにつながるだろう。
また、イベントの意義をより高めていくには、質問・コメントの質を担保すると同時に、より多種多様な職業の人たちに参加してもらうことも必要になるだろう。今回のイベントの主な参加者は、普段から「高校探究プロジェクト」のワークショップやイベントに参加している先生や大学生だった。プロジェクトの趣旨やイベントの意義に対する深い理解があるという面で非常に頼れる存在だが、よりさまざまな立場や価値観に触れたり、より探究活動と実社会をリンクさせるためには、多くのビジネスパーソンと交流・対話できる環境を創り出すことが望ましい。
実際、今回発表したある生徒からは「もっと理系寄りのアドバイスが欲しかったが、そういう人が少なかったので物足りなかった」という声もあったという。発表者の探究テーマに関連する業種・職種の人や専門家が参加していれば、さらに多くの学びを得ることもできただろう。過程に重きを置くという素晴らしい取り組みだけに、さらに意義あるものへと広がっていくことを期待したい。


