レポートや論文にまとめよう
大阪大学 全学教育推進機構 堀 一成 先生
このテキストでは、高校生の皆さんに、探究学習の成果をレポートや論文にまとめてみることをおすすめしてみようと思います。
1. レポートや論文を書く理由
皆さんの中には、「ポスターを作って発表したよ。それでいいじゃん。」と思っている人もいるかもしれません。
ポスター発表には不足している点があって、それをカバーするため、レポートや論文も書いてみましょうとおすすめしています。
(理由 1)
ポスターに書く内容はあまり多くできません。
細かい字でいっぱい書いたら読みにくくなってしまいます。
(理由 2)
発表の時に詳しく内容を口で説明すればいいのですが、発表の場にいない人に伝わりません。
(理由 3)
発表は苦手だという人もいると思います。
そういう人も書く作業なら緊張感が少なく、自分のペースですすめられるのではないでしょうか。
2. 書き始める前にアウトライン(骨組み)をつくろう
どういう内容を書こうとしているのか、レポートや論文の骨組みにあたることを自分で考えてまとめたもの(これをアウトラインといいます)を作ることが重要です。
探究学習をする基となった背景や目的など「問い」の情報、探究の成果である「答え」の情報を、短い文や単語だけでも OK ですので、書いてみましょう。
また、「答え」が出てくるもとになった証拠の情報「論拠」が手元にあるはずです。それも簡単に書き出しましょう。
そうすると、「問い」から「論拠」をもとに「答え」が導かれる話の流れができるはずです。それを自己流の手書きで大丈夫ですので、メモ書きしましょう。
3. レポートや論文はパラグラフの集まりで書こう
レポートや論文は、パラグラフの集まりになるよう工夫して書きましょう。パラグラフとは、ひとつの事柄を説明するために集めた文のかたまりといえます。
まず、そのパラグラフで紹介したい情報をまとめて一つの文にしたもの(トピック・センテンス)を作ってみましょう。
そのあと、トピック・センテンスに書いた内容の詳細説明や補足情報の文を後ろに付け加えていき、文のかたまりを作ります。
こうしたパラグラフを一つ一つ作ることで、レポートや論文を書いていきましょう。
4. ほかの人の成果(文献)をきちんと引用しよう
参考にしたほかの人の成果(文献)と、自分の探究の成果をきちんと区別して書くことが重要です。そのために、ほかの人の成果を正しく引用しましょう。
正しく引用する方法にはいくつかあります。
まず、短い文や文の一部を引用するときは、かぎ括弧「」でくくって書き出しましょう。
また数行以上など文のかたまりを引用するときは、まず引用部分を書き出し、そのあと、引用ではない部分と区別するための工夫をしましょう。
長い文献の情報は、レポートを書く人がその内容をまとめて書きましょう。
どのような形式の引用の場合でも、文章のその部分が引用であることがはっきりするように表現を工夫し、文献情報をきちんと書くなど、ほかの人の成果を自分の探究成果のように書いてしまっている(これを剽窃といいます)と誤解されないように注意してください。
レポートや論文の最後には、必ず本文内で引用したり参考にしたりした文献の一覧表をつけるようにしてください。
5. 書く順番を工夫しよう
レポートや論文を頭から書こうとすると、どう書き始めればよいのか悩んでしまって、書けなくなってしまう方が多いようです。書く順番を工夫しましょう。
まず、論拠を紹介する内容から書いていってはどうでしょうか。そのあと、自分の考えや主張を書いていきましょう。
これで、探究成果の説明の部分はできたことになります。これを「本論」部分といいます。
本論の(特に得られた探究成果の)内容を短くまとめて「結論」あるいは「後まとめ」として、本論の後ろに書きましょう。
最後に、背景説明や動機に加えて探究の成果を簡単に紹介する内容を、「序論」あるいは「前まとめ」として書くようにすれば、比較的スムーズに書いていけるのではないでしょうか。
また、レポートや論文は、そもそも文学作品ではありませんので、人を感心させる素敵な書き出しになっている必要はありませんね。無駄に悩まないようにしましょう。
この説明を参考にして、ぜひ楽しく探究学習の成果を書いていってください。