集めた情報を整理・分析しよう

中央大学附属中学校・高等学校 齋藤 祐 先生

集めた情報の整理と分析のしかた→「事実」にフォーカスし「仮説」を立てる

集めた情報を整理・分析する際のポイントをまとめると上記のようになります。
順番に見ていきましょう。

①「事実」にフォーカス
テーマを決めて調べていくと、大量の情報が手元に集まります。書籍やインターネットなど、今や情報を集める方法に困難はありません。しかし、集めた情報をどのように整理し、どのように分析していくか、これが難しいのです。

まずは、自分が集めた情報を整理する必要があります。今回は例として「お菓子業界の売上」を調べてみました。すると、全日本菓子協会という団体が種類別の小売金額を種類別にまとめてくれていましたので、そこから数字をお借りしてグラフにするところから始めました。

グラフにしてみると「チューインガムの売上が2010年頃から減っている」という事実が見つかりました。このような、他とは違う傾向があったり、今までにはない新しさがあったりという、ちょっと変わった特徴が見出せるような「事実」が見つかると、探究することが楽しくなります。

②「仮説」を立てる
次に、その事実が、なぜそのようになっているのかを考えます。これが分析です。なぜ、チューインガムが売れなくなったのでしょうか。今回の例では、次の3つを考えました。

 ア ガム好きが減った
 イ ガムのライバルが売れている
 ウ ガムを食べるヒマがない

アとイは、消費者の「ガム離れ」が起きているのではないか、というものです。グミやタブレット菓子など、以前は種類が少なかったものを店頭で多数見かけるようになったとすれば、それはそのままガムの需要を奪ってしまったという可能性にもつながります。

ウは、ガムを食べるシチュエーションに注目したものです。どんなときにガムを食べるかというと、食事と食事の間や、作業と作業の間など、よくよく考えてみればガムは「すきま時間」に食べられていた食品です。ガムが売れなくなった背景には、別の何かが消費者の時間を奪った、と考えることもできます。

では、かつてならガムを食べていた時間に、人々はいま、何をしているのでしょうか。

 エ 別のものを食べている
 オ ほかのことをしている

エは、先ほどのアとイをまとめたもの。オは、ウを言い換えたものです。

こうして分析を進めながら調査を続けていると、こんな資料が見つかりました。チョコレート菓子やスナック菓子を発売しているネスレ日本社長の高岡浩三さん(当時)が、こんな発言をしていたのです。

「ガムが売れなくなった背景には、スマートフォンの普及があると私は考えています。」

これは面白そうですね。高岡さんの推察通りならば、かつてガムを食べていた人々の時間をスマートフォンが奪った、という可能性があります。

ここまでくると、ウとオ「人々はガムを食べるヒマがないほど、ほかのことをしている」をベースにした「仮説」ができそうです。高岡さんのコメントを参考に再び調査を続けましょう。すると今度は、総務省情報通信白書に、情報通信機器の世帯保有率の推移がまとめられていました。これを見ると、2010年頃から急激にスマートフォンの保有率が上がっていることがわかります。いけそうです。ここまでを踏まえて、次のような「仮説」ができました。

仮説:チューインガムの売上が減った一因はスマートフォンの保有率上昇にある。

こうして「事実」にフォーカスし、「仮説」を立てることができました。もちろん、「仮説」はひとつとは限りません。さまざまな可能性を模索して下さい。そのためにもっと調査が必要だったり、中には実験してみないとわからなかったりすることもあるかもしれません。それでもここが、「探究」における最も大切な部分です。今回の例を参考にしてください。

まとめておきましょう。集めた情報を整理・分析するためには、①「事実」にフォーカスし、②「仮説」を立てること、がポイントです。そのためには、数字をグラフにしたり、新しく見つかった情報から類推して、別の情報を探しにいったりします。そうやって「仮説」を立て、試行錯誤を繰り返し、その確からしさを高めていくことを探究というのです。

皆さんの学びが実り豊かなものになることを期待しています。

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