2つのアプローチで作る!年間指導計画
神奈川県立生田東高校 大石智広先生
年間指導計画の目的や意義など、詳細については、すでにいろいろな所で語られています。例えば、国立教育政策研究所が作成した、指導と評価の手引きや、情報科教育法(実教出版株式会社)などの書籍にも、指導と評価の一体化を図りながら年間指導計画を立てることの重要性が説明されています。
そこでここでは、年間指導計画を立てる時に実際どのようなアプローチで取り組んだらよいのか、というより実践的な方法を説明させていただきたいと思います。私が提案させていただくのは、トップダウンとボトムアップの2つのアプローチで年間指導計画を立てる方法です。簡単に概要を述べると、トップダウンアプローチで年間の計画を大まかに決め、ボトムアップアプローチで内容を充実させよう、という方法になります。
まずはトップダウンアプローチのポイントを説明します。動かせない日程である学期などの評価の区切りごとに、どの単元を行い、どのような評価材料を集めるのか大まかに決めます。評価材料には、プリントやデジタルワークシートのような考えたことや理解したことを記録するもの、実習などの成果物や作品、定期テストや小テストなどのテスト、自分の学びを振り返った振り返り、などが考えられます。それぞれ、どの観点の評価に向いているかという得意・不得意はありますが、1つの観点に対して複数の評価材料をバランスよく収集できるようにします。例えば、一学期の評価材料に作品などの成果物がなければ、何か入れた方がいいかな、のように考えます。このように、単元や評価の区切りごとに、3観点に対する評価材料を集められるようにし、かつ、1つの評価材料だけではなく複数種類の評価材料を集められるように計画します。
また、テストの時期はずらすことができないので、例えば中間テスト前までに行う単元や、期末テストまでに行う単元を決めてしまいます。さらに、他教科とのカリキュラム連携を考慮しなければいけない単元や、学校全体の方針や要望を考慮して、単元の実施時期を大まかに決定します。例えば、プレゼンテーションをここまでにやってほしい、といった要望や、SNSのトラブルがあるので情報モラルは最初にやってほしい、などの要望がよくあります。
このように、まずは学期の区切りや、外部の要請や事情など、時期を動かせないものをもとにして、おおまかなスケジュールを作成します。
トップダウンアプローチで大まかなスケジュール感を決めたら、次はボトムアップアプローチでこだわりのある単元計画を作ります。今回は「こだわりのストーリーを持った単元」という表現をさせていただきました。1つ1つの授業を孤立させずに、単元を通した問いがあり、単元の最後にその問いに対して何らかの答えが見えてくるような、そんな単元計画をイメージしています。それを実現するための最大のポイントは、単元を通した問いやまとめを取り入れることです。私が行っている単元の例としては以下のようなものがあります。
単元 | 単元を通した問いや活動 |
---|---|
情報モラル | SNSを使用するポリシーを作ろう 毎回の授業の振り返りで、「SNSを上手に使うには」を書き足して最後にまとめる |
コンピュータや外部装置の仕組み | コンピュータを生み出したのは誰か パスカル、バベッジ、シャノンの3人のうち誰が生み出したものが、コンピュータをコンピュータたらしめたのか考察する データを蓄積•管理•提供する方法 |
情報の信ぴょう性を確かめるためのTipsを作ろう | 毎回の授業の振り返りで「情報の信ぴょう性を確かめるために○○する」を書きためて、Tips集を作る |
2つめの事例については、以下のサイトで発表内容を見ていただくことができます。
●神奈川県情報部会実践事例報告会 ポスター発表 [C-19]
3人の偉人を通して学ぶ「コンピュータとプログラミング」の単元 〜パスカル・バベッジ・シャノン コンピュータを生み出したのは誰の功績か?〜
●キミのミライ発見 授業事例 事例260
この単元では、最初の授業で、自分の生み出したものこそがコンピュータをコンピュータたらしめたのだと主張するパスカル、バベッジ、シャノンの3人の文章を読んだ後で、コンピュータを生み出したのは誰か、コンピュータとはなにかを生徒は考えます。そして、次の授業から、3人の生み出したものが、現代のコンピュータにどのように活用されているか、という観点で、現在のコンピュータの仕組みを学習します。そして、単元の最後に、あらためてコンピュータを生み出したのは誰か、コンピュータとはどのようなものかを自分なりに考察します。このようなストーリーにすることで、コンピュータの具体的な仕組みを学ぶとともに、コンピュータとはどのような特徴を持っているのか、そのうち何が一番本質的なものか、などを発見的に学べるように意図しています。
このように、つながりを持った単元計画を作ることで、生徒のモチベーションが上がったり、なぜこれを学んでいるのかという意味を掴めたりする授業を作ることができると考えています。全ての授業でこだわりのストーリーを作ることは難しいかもしれませんが、少しずつそういう単元を増やしていっていただければと思います。
今回は、トップダウンとボトムアップの2つのアプローチで年間指導計画を作る方法を提案させていただきました。ご参考になれば幸いです。